検索結果詳細


 『高野聖』 泉鏡花を読む

 何ぢやの、己が嬢様に念が懸つて煩悩が起きたのぢやの。うんにや、秘さつしやるな、おらが目は赤くツても、白いか黒いかはちやんと見える。
 地体並のものならば、嬢様の手が触つて那のを振舞はれて、今まで人間で居よう筈はない。
 牛か馬か、猿か、蝙蝠か、何にせい飛んだか跳ねたかせねばならぬ。谷川から上がつて来さしつた時、手足も顔も人ぢやから、おらあ魂消た位、お前様それでも感心に志が堅固ぢやから助かつたやうなものよ。

 570/622 571/622 572/622


  [Index]