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『婦系図』 青空文庫
「僕は構わん。僕は構わんが、あの調子だもの、祖母《おばあ》さんや妹たちはもとよりだ。故郷《くに》から連れて来ている下女さえ吃驚《びっくり》したよ。母様は、僕を呼びつけて談じたです。あんなものに朋輩呼ばわりをされるような悪い事をしたか。そこいらの芸妓《げいしゃ》にゃ、魚屋だの、蒲鉾《かまぼこ》屋の職人、蕎麦《そば》屋の出前持の客が有ると云うから、お前、どこぞで一座でもおしだろう、とね、叱られたです。
僕は何、あれは通りもんです。早瀬の許《とこ》へ行っても、同一《おなじ》く、今日は旨えものを食わせてやろう。居るか、と云った調子です、と云ったら、母様が云うにゃ、当前《あたりまえ》だ、早瀬じゃ、細君……」
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