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 『春昼』 泉鏡花を読む

 ト足を崩して兎角して膝に手を置いた。
 思はず、外の方を見た散策子は、雲の稍軒端に近く迫るのを知つた。
「手を上げて招いたと言ひます――ゆつたりと――行くともなしに前へ出て、それでも間二三間隔つて立停まつて、見ると、其の踞つたものは、顔も上げないで俯向いたまゝ、股引やうのものを穿いて居る、草色の太い胡坐かいた膝の脇に、差置いた、拍子木を取つて、カチ/\と鳴らしたさうで、其の音が何者か歯を噛合はせるやうに響いたと言ひます。

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