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『五大力』
従吾所好
其の蔭に、遙か末座へさがつて、遠慮らしく小さく坐つた、無地ものの綿入に、黒地の羽織で、服装〈なり〉も薄ぼけて、寒さうなが、肩つき胸つきの端然〈きちん〉とした、爺様が一人。釣船矢右衛門と言ふんです、八十五に成る、御狂言が、鼠色の毛糸の襟巻を取つて、しやんと手を支へて、
(えい、御新造、)
と叔母を呼んで、おつとりとした面長な顔を上げて、
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