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 『高野聖』 泉鏡花を読む

「いや、先づ聞かつしやい、彼の孤家の婦人といふは、旧な、これも私には何かの縁があつた、あの恐しい魔処へ入らうといふ岐道の水が溢れた往来で、百姓が教へて、彼処は其の以前医者の家であつたというたが、其の家の嬢様ぢや。
 何でも飛騨一円当時変つたことも珍しいこともなかつたが、唯取り出でていふ不思議は此の医者の娘で、生れると玉のやう。
 母親殿は頬板のふくれた、眦の下つた、鼻の低い、俗にさし乳といふあの毒々しい左右の胸の房を含んで、何うして彼ほど美しく育つたものだらうといふ。

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