検索結果詳細


 『歌行燈』 従吾所好

 空には蒼い星ばかり、海の水は皆黒い。暗の夜の血の池に落ちたやうで、あゝ、生きて居るか……千鳥も鳴く、私も泣く。……お恥かしうござんす。」
 と翳す扇の利剣に添へて、のやうな袖をあて、顔を隠した其の風情。人は声なくして、たゞ、ちり/\と、蝋燭の涙白く散る。
 此の物語を聞く人々、如何に日和山の頂より、志摩の島々、海の凪、霞の池に鶴の舞ふ、あの、麗朗〈うらゝか〉なる景色を見たるか。

 581/744 582/744 583/744


  [Index]