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『歌行燈』
従吾所好
空には蒼い星ばかり、海の水は皆黒い。暗の夜の血の池に落ちたやうで、あゝ、生きて居るか……千鳥も鳴く、私も泣く。……お恥かしうござんす。」
と翳す扇の利剣に添へて、
水
のやうな袖をあて、顔を隠した其の風情。人は声なくして、たゞ、ちり/\と、蝋燭の涙白く散る。
此の物語を聞く人々、如何に日和山の頂より、志摩の島々、海の凪、霞の池に鶴の舞ふ、あの、麗朗〈うらゝか〉なる景色を見たるか。
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