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 『五大力』 従吾所好

 怪我の時、入歯も損じた、もく/\と窪んだ頬で、唇をゆがめて、精を張つても漸つと聞取れる呂律の怪しいのが、切れぎれに、仰向けに寝たまゝ然う云つて、熟と私を見た目を、懶さうに最う塞ぐと、困つた野郎が心掛りな恩愛の涙が瞼を流れる……水洟と一所でね。
 身に染めば、それも尊い。ほろ/\と露が溢れるやうです。
 それを、白い手で従姉が拭くんだ、頬から鼻の下をね……其処へ、縦横に血の滲んだ擦剥傷が傷々しく見えるぢやないか。

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