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 『高野聖』 泉鏡花を読む

 父親の医者といふのは、頬骨のとがつた髯の生えた、見得坊で傲慢、其癖でもぢや、勿論田舎には刈入の時よく稲の穂が目に入ると、それから煩ふ、脂目、赤目、流行目が多いから、先生眼病の方は少し遣つたが、内科と来てはからツぺた、外科なんと来た日にやあ、鬢附へ水を垂らしてひやりと疵につける位な処。
 鰯の天窓も信心から、其でも命数の尽きぬ輩は本復するから、外に竹庵養仙木斎の居ない土地、相応に繁昌した。
 殊に娘が十六七、女盛となつて来た時分には、薬師様が人助けに先生様の内へ生れてござつたといつて、信心渇仰の善男善女? 病男病女が我も/\と詰め懸ける。

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