検索結果詳細


 『夜行巡査』 青空文庫

 半蔵門の方より来たりて、いまや堀端に曲がらんとするとき、一個の年紀《とし》少《わか》き美人はその同伴《つれ》なる老人の蹣跚《まんさん》たる酔歩に向かいて注意せり。渠《かれ》は編み物の手袋を嵌めたる左の手にぶら提灯を携えたり。片手は老人を導きつつ。
 伯父さんと謂われたる老人は、ぐらつく足を蹈み占めながら、
「なに、だいじょうぶだ。あれんばかしの酒にたべ酔ってたまるものかい。ときにもう何時だろう」

 58/164 59/164 60/164


  [Index]