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『夜行巡査』
青空文庫
半蔵門の方より来たりて、いまや堀端に曲がらんとするとき、一個の年紀《とし》少《わか》き美人はその同伴《つれ》なる老人の蹣跚《まんさん》たる酔歩に向かいて注意せり。渠《かれ》は編み物の手袋を嵌めたる左の手にぶら提灯を携えたり。片手は老人を導きつつ。
伯父さんと謂われたる老人は、ぐらつく足を蹈み占めながら、
「なに、だいじょうぶだ。あれんばかしの酒にたべ酔ってたまるものかい。ときにもう何時だろう」
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