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 『古狢』 青空文庫

 と言った。
 市場を出た処の、乾物屋と思う軒に、真《まっか》な蕃椒が夥多《おびただ》しい。……新開ながら老舗《しにせ》と見える。わかめ、あらめ、ひじきなど、磯《いそ》の香も芬《ぷん》とした。が、それが時雨でも誘いそうに、薄暗い店の天井は、輪にかがって、棒にして、揃えて掛けた、車麩《くるばぶ》で一杯であった。

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