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『高野聖』 泉鏡花を読む
其の頃からいつとなく感得したものと見えて、仔細あつて、那の白痴に見を任せて山に篭つてからは神変不思議、年を経るに従うて神通自在ぢや、はじめは体を押しつけたのが、足ばかりとなり、手さきとなり、果は間を隔てて居ても、道を迷うた旅人は嬢様が思ふまゝはツといふ呼吸で変ずるわ。
と親仁が其時物語つて、御坊は、孤家の周囲で、猿を見たらう、蟇を見たらう、蝙蝠を見たであらう、兎も蛇も皆嬢様に谷川の水を浴びせられて畜生にされたる輩!
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