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 『活人形』 鏡花とアンティークと古書の小径

 門札《かどふだ》を見て、「フム此家《ここ》だな。と門前に佇みたるは、倉瀬泰助といふ当時屈指の探偵なり。色く眼清《すゞ》しく、左の頬に三日月形《なり》の古創《ふるきず》あり。こは去年の春有名なる大捕物をせし折、鋭き小刀《ナイフ》にて傷けられし名残《なごり》なり。探偵の身にしては、賞牌ともいひつべき名誉の創痕《きずあと》なれど、衆《ひと》に知らるる目標《めじるし》となりて、職務上不便を感ずること尠からざる由を喞《かこ》てども、巧《たくみ》なる化粧にて塗抹《ぬりかく》すを常とせり。

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