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 『貝の穴に河童の居る事』 青空文庫

 縦横《たてよこ》に道は通ったが、段の下は、まだ苗代にならない溜《みずたま》りの田と、荒れた畠《はたけ》だから――農屋漁宿《のうおくぎょしゅく》、なお言えば商家の町も遠くはないが、ざわめく風の間には、海の音もおどろに寂しく響いている。よく言う事だが、四辺《あたり》が渺《びょう》として、底冷い靄《もや》に包まれて、人影も見えず、これなりに、やがて、逢魔《おうま》が時になろうとする。

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