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 『蛇くひ』 青空文庫

 傍《かたへ》に一本、榎を植ゆ、年経る大樹鬱蒼と繁茂《しげ》りて、昼も梟の威を扶《たす》けて鴉に塒《ねぐら》を貸さず、夜陰人静まりて一陣の風枝を払へば、愁然たる声ありておうおうと唸《うめ》くが如し。
 されば爰《こゝ》に忌むべく恐るべきを(おう)に譬へて、仮に(応《おう》)といへる一種異様の乞食《こつじき》ありて、郷《がう》屋敷田畝を徘徊《はいくわい》す。驚破《すは》「応」来れりと叫ぶ時は、幼童婦女子は遁隠《にげかく》れ、孩児《がいじ》も怖れて夜泣を止《とゞ》む。

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