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 『歌行燈』 従吾所好

 宮重大根のふとしく立てし宮柱は、ふろふきの熱田の神のみそなはす、七里のわたし浪ゆたかにして、来往の渡船難なく桑名につきたる悦びのあまり……
 と口誦むやうに独言〈ひとりごと〉の、膝栗毛五編の上の読初め、霜月十日あまりの初夜。中空は冴切つて、星が垢離取りさうな月明に、踏切の桟橋を渡る影高く、灯〈ともしび〉ちら/\と目の下に、遠近〈をちこち〉の樹立の骨ばかりなのを視めながら、桑名の停車場〈ステエシヨン〉へ下りた旅客がある。

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