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『絵本の春』 青空文庫
二条ばかりも重《かさな》って、美しい婦《おんな》の虐《しいた》げられた――旧藩の頃にはどこでもあり来《きた》りだが――伝説があるからで。
通道《とおりみち》というでもなし、花はこの近処《きんじょ》に名所さえあるから、わざとこんな裏小路を捜《さぐ》るものはない。日中《ひなか》もほとんど人通りはない。妙齢《としごろ》の娘でも見えようものなら、白昼といえども、それは崩れた土塀から影を顕《あら》わしたと、人を驚かすであろう。
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