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 『二、三羽――十二、三羽』 青空文庫

 椿の葉を払っても、飛石の上を掻分けても、物干に雪の溶けかかった処へ餌を見せても影を見せない。炎天、日盛《ひざかり》の電車道には、焦げるような砂を浴びて、蟷螂《とうろう》の斧と言った強いのが普通だのに、これはどうしたものであろう。……はじめ、ここへ引越したてに、一、二年いた雀は、雪なんぞは驚かなかった。山を兎が飛ぶように、雪を蓑にして、吹雪を散らして翔けたものを――
 ここで思う。その児、その孫、二代三代に到って、次第おくり、追続《おいつ》ぎに、おなじ血筋ながら、いつか、黄色な花、い花、雪などに対する、親雀の申しふくめが消えるのであろうと思う。

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