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『海神別荘』 華・成田屋
僧都 はは。(更めて手を支く。)
公子 あれの親は、こちらから遣わした、娘の身の代とかいうものに満足をしたであろうか。
僧都 御意、満足いたしましたればこそ、当御殿、お求めに従い、美女を沈めました儀にござります。もっとも、真鯛、鰹、真那鰹、その金銀の魚類のみでは、満足をしませなんだが、続いて、三抱え一対の枝珊瑚を、夜の渚に差置きますると、山の端出づる月の光に、真紫に輝きまするを夢のように抱きました時、あれの父親は白砂に領伏し(ひれふし)し、波の裙(すそ)を吸いました。あわれ竜神、一命も捧げ奉ると、御恩のほどを有難(ありがた)がりましたのでござります。
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