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 『天守物語』 泉鏡花を読む

薄 平時《いつも》のやうに、何処へとも何ともおつしやらないで、ふいにお出ましに成つたもの。
萩 お迎ひにも参られませんねえ。
薄 お客様、亀姫様のおいでの時刻を、それでも御含みでいらつしやるから、ほどなくお帰りでござんせう。――皆さんが、お心入れの御馳走、何、秋草を、早くお供へなさるが可いね。

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