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 『高野聖』 泉鏡花を読む

 医者も蒼くなつて、騒いだが、神の扶けか漸う生命は取留まり、三日ばかりで血も留まつたが、到頭腰がぬけた、固より不具。
 之が引摺つて、足を見ながら情けなさうなをする、蟋蟀が〓《も》がれた脚を口に銜へて泣くのを見るやう、目もあてられたものではない。
 しまひには泣出すと、外聞もあり、少焦で、医者は可恐しい顔をして睨みつけると、あはれがつて抱きあげる娘の胸に顔をかくして縋る状に、年来随分と人を手にかけた医者も我を折つて腕組をして、はツといふ溜息。

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