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 『高野聖』 泉鏡花を読む

 しまひには泣出すと、外聞もあり、少焦で、医者は可恐しい顔をして睨みつけると、あはれがつて抱きあげる娘の胸に顔をかくして縋る状に、年来随分と人を手にかけた医者も我を折つて腕組をして、はツといふ溜息。
 軈て父親が迎にござつた、因果と断念めて、別に不足はいはなんだが、何分小児が娘の手を放れようといはぬので、医者も幸、言訳旁々、親兄の心をなだめるため、其処で娘に小児を家まで送らせることにした。

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