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 『高野聖』 泉鏡花を読む

 此の洪水で生残つたのは、不思議にも娘と小児と其に其時村から供をした此の親仁ばかり。
 同一水で医者の内も絶えた、さればかやうな美女が片田舎に生れたのも国が世がはり、代がはりの前兆であらうと、土地のものは言ひ伝へた。
 嬢様は帰るに家なく、世に唯一人となつて小児と一所に山に留まつたのは御坊が見らるゝ通り、又那の白痴につきそつて行届いた世話も見らるゝ通り、洪水の時から十三年、いまになるまで一日もかはりはない。

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