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『高野聖』 泉鏡花を読む
(恁う身の上を話したら、嬢様を不便がつて、薪を折つたり水を汲む手助けでもしてやりたいと、情けが懸らう。本来の好心、可加減な慈悲ぢやとか、情けぢやとかいふ名につけて、一層山へ帰りたかんべい、はて措かつしやい。彼の白痴殿の女房になつて世の中へは目もやらぬ換にやあ、嬢様は如意自在、男はより取つて、飽けば、息をかけて獣にするわ、殊に其の洪水以来、山を穿つたこの流れは天道様がお授けの、男を誘ふ怪しの水、生命を取られぬものはないのぢや。
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