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 『高野聖』 泉鏡花を読む

 天狗道にも三熱の苦悩、髪が乱れ、色が蒼ざめ、胸が痩せて手足が細れば、谷川を浴びると旧の通り、其こそ水が垂るばかり、招けば活きた魚も来る、睨めば美しい木の実も落つる、袖を翳せば雨も降るなり、眉を開けば風も吹くぞよ。
 然もうまれつきの色好み、殊に又若いのが好きぢやで、何か御坊にいうたであらうが、其を実とした処で、軈て飽かれると尾が出来る、耳が動く、足がのびる、忽ち形が変ずるばかりぢや。

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