検索結果詳細


 『春昼』 泉鏡花を読む

 爾時、御新姐の顔の色は、こぼれかゝつた艶やかなおくれ毛を透いて、一入美しくなつたと思ふと、あの其の口許で莞爾として、うしろざまにたよ/\と、男の足に背をもたせて、膝を枕にすると、黒髪が、ずる/\と仰向いて、真白な胸があらはれた。其の重みで男も倒れた、舞台がぐん/\ずり下つて、はツと思ふと旧の土。
 峰から谷底へかけて哄と声がする。そこから夢中で駈け戻つて、蚊帳に寝た私に縋りついて、
(水を下さい。)

 616/628 617/628 618/628


  [Index]