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 『薬草取』 青空文庫

 高坂は何となく、物語の中なる人を、幽境《ゆうきょう》の仙家《せんか》に導く牧童《ぼくどう》などに逢う思いがしたので、言《ことば》も自《おのず》から慇懃《いんぎん》に、
「私も其処《そこ》へ行《ゆ》くつもりです。四季の花の一時《いっとき》に咲く、何という処《ところ》でしょうな。」
「はい、美女《びじょ》ヶ原《はら》と申します。」

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