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 『義血侠血』 青空文庫

 後れたる人力車は次の建場にてまた一人を増して、後押しを加えたれども、なおいまだ逮《およ》ばざるより、車夫らはますます発憤して、悶ゆる折から松並み木の中ほどにて、前面《むかい》より空車《からぐるま》を挽き来たる二人の車夫に出会いぬ。行き違いさまに、綱曳きは血声を振り立て、
「後生だい、手を仮《か》してくんねえか。あの瓦多《がた》馬車の畜生、乗っ越さねえじゃ」
「こっとらの顔が立たねえんだ」と他の一箇《ひとり》は叫べり。

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