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 『歌行燈』 従吾所好

「狐狸や、いや、あの、吠えて飛ぶ処は、梟の憑物がしよつた、と皆気違ひにしなさいます。姉さんも、手放すのは可哀相や言つて下さいましたけれど、……周囲〈まわり〉の人が承知しませず、……此の桑名の島屋とは、行かひはせぬ遠い中でも、姉さんの縁続きでござんすから、預けるつもりで寄越されましたの。」
「おゝ、其処で、又辛い思をさせられるか。先づ/\、其は後でゆつくり聞かう。……其のお娘、私も同一〈おんなじ〉ぢや。天でなくて、若い女が、術〈わざ〉をするはと、仰天したので、手を留めて済まなんだ。さあ、立直して舞うて下さい。大儀ぢやらうが一さし頼む。私も久ぶりで可懐しい、御身の姿で、若師匠の御意を得よう。」

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