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 『絵本の春』 青空文庫

 私は今でも現《うつつ》ながら不思議に思う。昼は見えない。逢魔《おうま》が時からは朧《おぼろ》にもあらずして解《わか》る。が、夜の裏木戸は小児心《こどもごころ》にも遠慮される。……かし本の紙ばかり、三日五日続けて見て立つと、そのしいお嬢さんが、他所《よそ》から帰ったらしく、背《せな》へ来て、手をとって、荒れた寂しい庭を誘って、その祠《ほこら》の扉を開けて、燈明の影に、絵で知った鎧《よろい》びつのような一具の中から、一冊の草双紙を。……

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