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 『義血侠血』 青空文庫

「まあお聞きなさい。ところで出刃打ちの白状には、いかにも賊を働きました。賊は働いたが、けっして人殺しをした覚えはございません。奪《と》りましたのは水芸の滝の白糸という者の金で、桐田の門は通過《とおり》もしませんっ」
「はて、ねえ」と甲者は眉を動かして、弁者を凝視《みつ》めたり、乙者は黙して考えぬ。ますますその後段を渇望せる乗り合いは、順繰りに席を進めて、弁者に近づかんとせり。渠はそのとき巻莨を取り出だして、唇に湿しつつ、

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