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 『五大力』 従吾所好

「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、」
「婆さんが、私の色を憂慮つて、
(否、おいらんには内証のものがござんした。しかしね、顔がそんなに成つたので、其の人には棄てられます……親と云つても、九尺二間に割世帯の中〈うち〉へ引取られて居ましたが、一頃病気が、中なほりをした時分、店〈うち〉へ毎日のやうに精々〈せつせ〉来て、貴方に逢はせろ/\つて申します。余り、いぢらしいから、一層、お逢はせ申さうか、と私も思つて、(ぢや逢はせようかい、)と云や、(否、治りましてから、こんな顔をして、まあ私。)ツて、上衣の禿げた紺の筒服〈つゝツぽ〉の腰切なのに、お召の前掛ばかり、綺麗なのを〆めて居て、其の前掛で顔を隠すかと思ふと、――小弥太さん、おいらんは居ない/\、ばあ、……とニヤリと出します。其の目が二ツ蝸牛〈まひ/\つぶろ〉のやうにぶらりと出て居ませう。尤も、気もをかしかつたものと見えます。そんなこんなで取のぼせて、ついねえ、お前さん。)

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