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 『人魚の祠』 青空文庫

 向つて左の端に居た、中でも小柄なのが下して居る、棹が満月の如くに撓《しな》つた、と思ふと、上へ絞つた糸が真直に伸びて、するりと水の空へ掛つた鯉が――」
 ――理学士は言掛《いひか》けて、私のを視て、而《そ》して四辺《あたり》を見た。恁うした店の端近は、奥より、二階より、却つて椅子は閑《しづか》であつた――

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