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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 「ええ、」
 と黒門の年若な逗留客は、火のない煙草盆の、遙に上の方で、燧火《マッチ》を摺って、静に吸いつけた煙草の火が、その色のい頬に映って、長い眉を黒く見せるほど室《ま》の内は薄暗い。――差置かれたのは行燈である。

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