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 『義血侠血』 青空文庫

 傍聴者は声を斂《おさ》めていよいよ耳を傾けぬ。威儀ある紳士とその老母とは最も粛然として死黙せり。
 弁者はなおも語《ことば》を継ぎぬ。
「実にこれは水掛け論さ。しかしとどのつまり出刃打ちが殺したになって、予審は終結した。今度開くのが公判だ。予審が済んでからこの公判までにはだいぶ間《ひま》があったのだ。この間に出刃打ちの弁護士は非常な苦心で、十分弁護の方法を考えておいて、いざ公判という日には、一番腕を揮って、ぜひとも出刃打ちを助けようと、手薬煉《てぐすね》を引いているそうだから、これは裁判官もなかなか骨の折れる事件さ」

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