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『歌行燈』
従吾所好
「ご免なさいよ。」
頬被りの中の清〈すゞ〉しい目が、釜から吹出す湯気の裏〈うち〉へすつきりと、出たのを一目、驚いた
顔
をしたのは、帳場の端に土間を跨いで、腰掛けながら、うつかり聞惚れて居た亭主で、紺の筒袖にめくら縞の前垂がけ、草色の股引で、尻からげの形〈なり〉、によいと立つて、
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