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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 「ああ、手《てん》ぼうの……でございますな。」
 「そうです。あの親仁にもいわないでいたんですが、猫と一所に手毬の亡くなります些と、前です。
 この古館の先ず此処へ坐りましたが、爺さんは本家へ、といって参りました。黄昏に唯私一人で、これから女中が来て、湯を案内する、上って来ます、膳が出る。床を取る、寝る、と段取《だんどり》の極りました旅籠屋でも、旅は住心《すみごころ》の落着かない、全く仮の宿です……のに、本家でも此処を貸しますのを、承知する事か、しない事か。便りに思う爺さんだって、旅他国で畔道の一面識。自分が望んでではありますが、家といえば、この畳を敷いた――八幡不知。

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