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『歌行燈』 従吾所好
(間に依つては声が響く。内証で来たんだ。……藤屋には私の声が聞かしたくない、叔父が一人寝てござるんだ。勇士は霜の気勢を知るとさ――唯さへ目敏い老人〈としより〉が、此の風だから寝苦しがつて、フト起きてでも居るとならない、祝儀は置いた。帰るぜ。)
ト宗山が、凝と塞いだ目を、ぐる/\と動かして、
(暫く、今の拍子を打ちなされ……古市から尾上町まで声が聞えようか、と言ひなさる、御大言、年のお少さ。まだ一度も声は聞かず、顔は固より見た事もなけれども……当流の大師匠、恩地源三郎どの養子と聞く……同じ喜多八氏の外にはあるまい。然やうでござらう、恩地、)
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