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 『義血侠血』 青空文庫

 乗客は忙々《いそがわしく》下車して、思い思いに別れぬ。最後に威儀ある紳士はその母の手を執りて扶け下ろしつつ、
「あぶのうございますよ。はい、これからは腕車《くるま》でございます」
 渠らの入りたる建場の茶屋の入り口に、馬車会社の老いたる役員は佇めり。渠は何気なく紳士の顔を見たりしが、にわかにわれを忘れてその瞳を凝らせり。

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