検索結果詳細


 『義血侠血』 青空文庫

 渠らの入りたる建場の茶屋の入り口に、馬車会社の老いたる役員は佇めり。渠は何気なく紳士の顔を見たりしが、にわかにわれを忘れてその瞳を凝らせり。
 たちまち進み来たれる紳士は帽を脱して、ボタンの二所失《と》れたる茶羅紗《ちゃらしゃ》のチョッキに、晶の小印《こいん》を垂下《ぶらさ》げたるニッケル鍍《めっき》の〓《くさり》を繋《か》けて、柱に靠《もた》れたる役員の前に頭を下げぬ。

 665/706 666/706 667/706


  [Index]