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『義血侠血』
青空文庫
渠らの入りたる建場の茶屋の入り口に、馬車会社の老いたる役員は佇めり。渠は何気なく紳士の顔を見たりしが、にわかにわれを忘れてその瞳を凝らせり。
たちまち進み来たれる紳士は帽を脱して、ボタンの二所失《と》れたる茶羅紗《ちゃらしゃ》のチョッキに、
水
晶の小印《こいん》を垂下《ぶらさ》げたるニッケル鍍《めっき》の〓《くさり》を繋《か》けて、柱に靠《もた》れたる役員の前に頭を下げぬ。
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