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 『歌行燈』 従吾所好

 と宗山が二階で喚〈わめ〉いた。皺枯声が、風でぱつと耳に当ると、三四人立騒ぐ女の中から、すつと美しく姿を抜いて、格子を開けた門口で、しつかりと掴まる。吹きつけて揉む風で、颯と紅い褄が搦むやうに、私に縋つたのが、結綿の、其の娘です。
 背中を揉んでた、薄茶を出した、あの影法師の妾だらう。
 ものを言ふ清〈すゞし〉い、張のある目を上から見込んで、構ふものか、行きがけだ。

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