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『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径
「決して、さような事はございません。茶店の婆さんはこの邸に憑物の――ええ、唯聞きましたばかりでも、なるほど、浮ばれそうもない、少《わか》い仏たちの回向も頼む。ついては貴下《あなた》のお話も出ましてな。何か御覚悟がおありなさるそうで、熟《じっ》と辛抱をしてはござるが、怪しい事が重なるかして、お顔の色も、日毎に悪い。
と申せば、庭先の柿の広葉が映る所為で、それで蒼白く見えるんだから、気にするな、とおっしゃるが、お身体も弱そうゆえに、老寄《としより》夫婦で一層のこと気にかかる。
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