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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 と言いかけて偶《ふ》と見返った、次の室《ま》と隔ての襖は、二枚だけ山のように、行燈の左右に峰を分けて、隣国《となりぐに》までは灯が届かぬ。
 心も置かれ、後髪も引かれた状《さま》に、僧は首に気を入れて、ぐっと硬くなって、向直って、
 「その怪しいものの方でも、手をかえ、品をかえ、怯《おびや》かす。――何かその……畳がひとりでに持上りますそうでありますが、真個《まったく》でございますかな。」

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