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 『国貞えがく』 青空文庫

 春は過ぎても、初夏の日の長い、五月中旬《なかば》、午頃の郵便局は閑《かん》なもの。受附にもどの口にも他に立集《たちつど》う人は一人もなかった。が、為替は直ぐ手取早くは受取れなかった。
 取扱いが如何にも気長で、
 「金額は何ほどですか。差出人は誰でありますか。貴下《あなた》が御当人なのですか。」

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