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 『逢ふ夜』 従吾所好

 其のまだうら若かつた十九の春、……男が微酔で、懇意は後廻しの日の暮方、年始に来ると、羽子板に袂を懸けて、対手欲しさうに、両側の小松を楯に、年の内のを大事に持した三日目頃の、一寸ほつれたのもしい、水の垂りさうな高島田で、此の裏通りの、向うの湯屋に早や燈の入つたのを、日が短かさうな、もの足りない、派手な顔して覗いて居たのが、ト其と見ると、見迎への会釈に、黙って、目のふちをほんのりさして、羽子板を胸へ抱くや、八ツ口がひらりと翻る、襟足の雪すつきりと、背後を見せて、

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