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 『二、三羽――十二、三羽』 青空文庫

 かつて、北越、倶利伽羅《くりから》を汽車で通った時、峠の駅の屋根に、車のとどろくにも驚かず、雀の日光に浴しつつ、屋根を自在に、樋の宿に出入りするのを見て、谷に咲残った撫子《なでしこ》にも、火牛《かぎゅう》の修羅の巷を忘れた。――古戦場を忘れたのが可いのではない。忘れさせたのが雀なのである。
 モウパッサンが普仏戦争を題材にした一篇の読みだしは、「巴里《パリイ》は包囲されて飢えつつ悶えている。屋根の上に雀も少くなり、下の埃《ごみ》も少くなった。」と言うのではなかったか。

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