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 『夜叉ヶ池』 青空文庫

百合 (笊《ざる》を抱えて立つ)ええ、大事ござんせん。けれども貴客《あなた》、御串戯《ごじょうだん》に、お杖やなんぞでお敲《たた》き遊ばしては不可《いけ》ません。
学円 西瓜《すいか》を買うのではありません。決して敲いてはみますまい。(笑う。)
百合 御串戯おっしゃいます。……いいえ、悪戯《いたずら》を遊ばすようなお方とは、お見受け申しはしませんけれど、その鐘は、明六つと、暮六つと、夜中丑満《うしみつ》に一度、――三度のほかは鳴らさない事になっておりますから、失礼とは存じましたが、ちょっと申上げたのでございます。さあ、どうぞ御遠慮なく、上って御覧なさいまし。(夕顔の垣根について入《いら》んとす。)

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