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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 しかしまた洋燈《ランプ》ばかりが、笠から始めて、ぐるぐると廻った事がありました。やがて貴僧《あなた》、風車のように舞う、その癖、場所は変らないので、あれあれという内に火が真丸になる、と見ている内、白くなって、それに蒼味がさして、茫として、熟《じっ》と据る、その厭な光ったら。
 映る手なんざ、へ突込んでるように、畝ったこの筋までが蒼白く透通って、各自《てんで》の顔は、皆その熟した真桑瓜に目鼻がついたように黄色く成ったのを、見合せて、呼吸《いき》を詰める、とふわふわと浮いて出て、その晩の座がしらという、一番強がった男の膝へ、ふッと乗ったことがあるんですね。

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