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 『薬草取』 青空文庫

 と女が高く仰《あお》ぐに連《つ》れ、高坂も葎《むぐら》の中に伸上《のびあが》った。草の緑が深くなって、倒《さかさま》に雲に映《うつ》るか、水底《みなそこ》のような天《てん》の色、神霊秘密《しんれいひみつ》の気《き》を籠《こ》めて、薄紫《うすむらさき》と見るばかり。
「その女ヶ原までどのくらいあるね、日の暮れない中《うち》行《ゆ》かれるでしょうか。」
「否《いいえ》、こう桜が散って参りますから、直《じき》でございます。私も其処《そこ》まで、お供いたしますが、今日こそ貴方《あなた》のようなお連《つれ》がございますけれど、平時《いつも》は一人で参りますから、日一杯《ひいっぱい》に里まで帰るのでございます。」

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