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『日本橋』
青空文庫
「なんて。――可哀相に、蒸したり焼いたり出来ますかって貴下――おまけにお雛様んでしょう――この方の心意気は、よく分ってるじゃありませんか。
私だって放しに来ました、見て下さいな。」
片手を添えて、捧げたのは、錦手の中皿の、半月|形に破れたのに、小さな口紅三つばかり、裡紫の壺|二個。……その欠皿も、白魚の指に、紅猪口のごとく蒼く輝く。
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