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 『活人形』 鏡花とアンティークと古書の小径

 先刻《さき》に城得三が、人形室を出行きたる少時《しばらく》後に、不思議なることこそ起りたれ。風も無きに人形の被《かづき》揺めき落ちて、妖麗《あでやか》なる顔の洩れ出でぬ。瑠璃の如き眼も動くやうなりしが、怪しい哉影法師の如き美人静々と室《ま》の中《うち》に歩み出でたり。此幻影《まぼろし》喩へば月夜に水を這ふ煙に似て、手にも取られぬ風情なりき。

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